Chapter 03
フラットに、レールは敷かない。
という山本スタイル
「自立」と「体験欲」が価値観の要になっている山本さんですが、会社のことや起業に至った経緯について伺う中で、人や物事への向き合い方に一貫したスタンスをもたれていることに気づきました。本章では、そんな山本スタイルの一部をお伝えします。
フラットな視点と関係性
山本スタイルの中でも、私が特に特徴的だと感じたのは他者に対する「フラットさ=公平性」でした。経営者と社員では責任の範囲やお金に関する考えが大きく違うので、両者の間にはかなり隔たりがあるものではないでしょうか。ですが、山本さん自身は社員との間にあまり壁を感じていないそう。山本さんとお話していると「これは自分にはできない。」とか、「あの人は自分にはできないこれができてすごい。」などと、相手の年齢や立場に関係なくとてもサラッと仰るのですが、自分のことをしっかり内観して等身大で受け入れているからこそ飾らない自信をもっていて、他者にも対等に向き合うことができるのではないかなと感じました。
2010.01
参加しよう!全員技術全員営業、全員裏方全員代表!
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また、インタビューの中で自身のご家族についてもよくお話してくださるのですが、お子さんのことをリスペクトされている点がとても印象的でした。親にとって子供はいくつになっても子供、などとよく聞きますが、中学生〜大学生のお子さんたちのことを「俺と違って息子(娘)はこういった所が得意、凄い」と、「感心」ではなく「敬意」を込めた眼差しで仰っていました。「社員だけでなく、お子さんに対する向き合い方もフラットですよね。」とお伝えしたところ、「親と子は血が繋がっているけれど魂は個別で固有。だから親が持っていないものを子供が持っていて当然だし、対等なひとりの人間としてみる方が関係性としては健全だと思う。」とのこと。独特の価値観だなと思いました。
2014.09
全員が、その家族に誇りと思われる会社を、全員でつくる
全員が、その家族に誇りと思われる会社を、全員でつくる
とかく人間は年齢や性別や学歴、役職などの属性で相手を判定してしまいがちですが、根本にこのような考えを持たれているから誰に対しても同じ目線で向き合うことができるのだと気づかされます。対等に向き合う姿勢は言葉以上に「あなたのことを認めている」と相手に伝わると思います。社長と社員、上司と部下、先生と生徒、親と子といった、立場に偏りが生じやすい関係において、リーダーの側からこのような姿勢を示すことは大いに意味があるように感じました。
2013.07
1対1で対話しよう!
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「山本家未来年表」に見る線の視点
ご自宅リビングに貼られている山本家未来年表
「山本さんってこんな人!」と語る上で外せないエピソードの一つに、「山本家未来年表」があります。縦軸に年齢と年収、横軸にはご自身と奥様のご両親を含む家族全員のお名前が並んでおり、過去には皆さんの経歴、未来には将来の目標や実現したいことなどの未来設計が記されています。
2つ進んで1つ上がるくらいが丁度いい。ちょっとづつでも永遠に上がり続けるこの直線が好きという山本さん。
子は親の背中を意識するものだから、足跡をそのまま見せておくことで各々時期が来たときに何らかの判断材料になるだろう。また主人が未来をどう考えているかを宣言しておくことは家族全体の安心材料に繋がるのではないか、という思いで作成されたそうで、家族の集まるリビングの壁に貼って、都度更新されているそうです。過去の出来事も未来の展望も、高校生、○歳、などと点で考えることが多いように思うのですが、それを年表というひと繋がりの形で表現され、一目で人生全体が見えるようまとめられているところが興味深いです。親が自分と同じ年齢の頃に何をしていたのか、今後の人生をどう考えているのかを知る機会自体少ない気がするので、人生の先輩が背中を見せてくれているような心強さがありますね。
会社を取り巻く人間関係や自社製品からも線の視点が伺えます。社歴の長い社員さんが多いことは言うまでもないのですが、その社員以上に長くお付き合いされているパートナーさん(社内では外注でなくパートナーと呼んでいます)が多数いることに驚きました。また創業初期のお客様を無下にせず、採算とは関係無く継続してフォローしている点もこの業界では珍しいことだと思います。「瞬発力に自信はあるけれど長期的な視点で積み上げていく方が好き。」と仰っていたのですが、ヒトもモノも、長く続く関係性を大切にされているところも山本スタイルの一つだなと感じました。
また山本さんは会社の理想的な成長線として「y=1/2x」を掲げています。y=x2乗のような加速度的な成長ではなく、緩やかで安定した直線で、永遠に登っていきたいという想いからだそうです。
自立のベースは心・理・体
三つ目のスタイルについて語る前に、山本さんが価値観として重きを置かれている「自立」について少し考えてみたいと思います。「自立」と一口に言っても、色々な面での自立がありますが、山本さんの考える「自立」とは「心・理・体(しんりたい)3つの面で自立すること。」だそうです。「心・理・体」はそれぞれ、精神、頭脳、身体を意味しており、武道でよく使われる「心技体」という言葉をアレンジした造語とのこと。 「心」は、何があっても折れない粘り強い精神力と他者を思いやることができる包容力。「理」は、経済的な自立を図るために必要なお金を稼ぐ知恵と能力。「体」は、医者や薬など外部に頼らず生きていくための自己免疫力や基礎体力。また、自分の課題を心と頭と体の3つの要素に分解して考えるという手法は、受験勉強や資格試験やビジネス、ひいては人生そのものにおいても役に立つので、山本さんご自身も課題を整理する手助けとしていつも頭におかれているそうです。
背中は見せるがレールは敷かない
社員やお子さんたちに、心理体の面で自立していって欲しいという想いのある山本さんですが、自立を育む姿勢には独自の信念をお持ちです。それは「直接言わない・管理しない・強制しない」を徹底すること。例えば、前章でお伝えした「お父さんのオススメコーナー」という本棚ですが、お子さんたちに「読みなさい」とは言わないとのこと。「本を読むのはもちろん良いことだけど、読書に限らず人に言われてしたことは大抵身にならないでしょ?自然に興味が芽生えた時に、そのベクトルをぐっと伸ばしてあげられるよう選択肢を置いておく。手厚く助けることは「自力で成長する」という楽しみを奪うことだからね。(山本談)」
この姿勢は社員に対してもお子さんに対しても一貫されていますね。
山本家家訓 山本さんが勝手につくった家訓だそうです(笑)社員にもお子さんにも、言われていることの根本はいっしょなんですね。
この「直接言わない。選択肢を用意する。」というスタンスは、昔テニスコーチのお仕事をされた時の「自分には直接教えることがあまり向いていない」という気づきも影響しているとのこと。また、きっとご自身の20代の経験(一般的なキャリアの積み方ではなく、自分自身と向き合って紡いできたキャリア)があるからこそ、敷かれたレールではなく、自分の意思で進むことの大切さを実感されているのではないかなと思いました。
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Epilogue